中級

海藻

投稿日:

いい年をしてぶらぶらと遊び呆け、

多額の借金をこしらえた男がいた。

年老いた母親が八方頭を下げて男の借金を返してやり、

男は母親に連れられて実家へ帰ることになった。

ところが二人が乗り込んだフェリーは岸を離れたところで座礁して沈没し、

男と母親を含めた乗客たちは真っ暗な夜の海へと投げ出された。

水面に上がろうともがく男の足には、海藻が何度も絡みつき、

男はその度に水中深く引き込まれそうになった。

男は海藻を蹴りほどきながら、命からがら海岸まで泳ぎ着いた。

翌朝、浜辺には水死したフェリーの乗客の死体が多数打ち上げられた。

その中には、恨めしげな顔を浮かべた男の母親の死体もあった。

男は震えながら、傍で合掌していた地元の老人に尋ねた。

「じいさん、このあたりの海は海藻が多いんだろ?」

しかし、老人は首を振って答えた。

「いいや。石ころばっかりで、海藻なんか一本も生えてねえ海だよ」

-中級

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

優しいお医者さん

脳死が確認されて二週間を経過した兄の皮膚細胞は、無数のチューブに繋がれ、人工呼吸器と点滴によって生き続けていました。 しかしそれも、昨日までの話です。今日、兄は死んでしまったのです。 「すみません。手 …

no image

リサイクル

駅のベンチで電車を待っていた時、隣に赤ん坊を抱いた夫人が座った。 子供好きな俺はついジッと見てしまった。 それに気付いたのか夫人が聞いてもいないのに話しかけてきた。 「これね、実はバッグなんですよ。」 …

犯人は君かね?

23日 「犯人は君かね?」 「違います」 24日 「犯人は君かね?」 「違います」 29日 「犯人は君だね?」 「はいそうです」 31日 「犯人は君かね?」 「違います」 34日 「犯人は君だね?」 …

僕は、几帳面な母と痴呆症のじいちゃんと三人暮らしだ 明け方にじいちゃんの部屋に行ったら居なくなってたから また夜中に外にでも散歩に行こうとしたのかと思って窓を開けたら そこから転落したみたいで真下の庭 …

ワケの分からないこと

俺が公園のベンチに座っていると、突然知らない女が話しかけてきた。 女はワケのわからないことを俺に言ってくる。 気持ち悪い女だと思い適当にあしらって帰ろうとしたが、いきなり俺の妻は死んだとか言いだしたの …