赤ん坊

数日前、夜中に24時間営業のスーパーに行ったら、ガランとした店内に、赤ん坊の泣き声が響き渡ってた。

夜中に赤ちゃん連れ出すとか、なに考えてんだよ、と声のする方を見たら、

若い男が危なっかしい手付きで赤ちゃんを抱いていて、今にも落としそうになっていた。

おいおいDQN親は抱っこのやり方も知らねーのかよ、と呆れた次の瞬間、

赤ちゃんの重心が、男の腕の外に移っていくのが、スローモーションの様に見えた。

まだ首も座ってない赤ん坊が、頭から落ちていく。一気に血の気が引いた。

けど、間一髪で駆け寄った女性が、

赤ちゃんを男からひったくる様にして抱きとめ、

「なにしてんの!」とかなんとか叱りつけた。

そのバカ親はお礼も言わず、何を思ったのか

急に走って店を飛び出した。

一人で、赤ん坊を置き去りに。

女性も俺もポカーン。

女性の腕の中では、相変わらず赤ちゃんが大泣きしていた。

そして今日、その時の女性が事件の被害者として報道されていた。

犯人は今も逃走中で、警察はこれ以上の失態を避けるべく、俺を探しているという。

俺は震えを抑えながら電話を手にとった。

渋滞

ああ、暑い。

前も後ろも右隣も、動かない車で景色が塞がれている。

もう夕方だろうか、燃えるような夕陽が差し込んでくる。

車内に閉じ込められてから、1時間は経つだろう。

ラジオを聴いていると、どうもこの辺りで車数台を巻き込む大きな事故があったらしい。

死人も出たみたいだが、その辺りの情報は隣りの車の男がやけに詳しかった。

携帯しているペットボトルから麦茶を飲む俺に、同じく隣で立ち往生している男が話しかけてきた。

・・・なあ、ひどい汗だな。

今日は暑いのに、ツイてねぇな。

黙って暑さに耐えているよりは、誰かと話しているほうが気も紛れるだろう。

俺が事故の話題を振ると、その様子をまるで見ていたように事細かに語ってきた。

・・・首がさ、取れかけてたンだってよ。

こうボキっと。

そうして天を仰ぐようにがくんと頭を倒してみせた。

どうやら玉突き事故を起こした車の持ち主のことらしい。

俺はまた、麦茶を飲んだ。

汗が噴きでる。暑さのせいか?

適当に相槌を返しながら、俺は体にまとわりつくTシャツを引っ張っていた。

ふいに男のふざけた表情が、喜びの顔に変わる。

・・・じゃ、お先に。

隣の車線がゆるゆると動き出し、坂道を登り始めた。

ああ、ここは坂道だったろうか。

俺の車線はまだか?

いくら飲んでも飲み足りない。

妙に汗がベタついて嫌だ。

三回忌

もうすぐ妻の三回忌だ。

夫婦仲は最悪だった。

勤めていた会社が倒産し、再就職したのは零細企業。

結婚するときの約束、マイホームは絶望的だった。

おまけに、まだ若いのにハゲ始め、腹の突き出たメタボ体型になってしまった。

妻は毎日のように俺を

「甲斐性なし!ハゲ!ピザ!」と責めた。

そんな妻があっけなく逝った。

あんなに喧嘩ばかりしていたのに、いざ居なくなってみると寂いものだ。

妻の夢だったマイホームを購入し、一周忌法要は新居に坊さんと親族を招いて行った。

新居の仏壇に飾られた遺影の妻もうれしそうに見えた。生きてる間に買ってやれなくてごめん。

もうすぐ三回忌。三回忌法要もマイホームで行うつもりだった。

しかし残念ながらやってあげられそうにない。

七回忌も十三回忌も難しいかも知れない。

もうすぐ夕食だ。

麦めしにおかずが1,2品だけの質素な食事だが、上げ膳据え膳だし、栄養バランスを考えた

食事だ。

こんな食事をかれこれ半年続けているのでメタボは解消されたよ

三つ目の願い

あるところに、とても物知りの若者がいた。ある男が彼に質問した。

「なあ、悪魔を呼び出せば3つの願いをかなえてくれるんだろう?」

「そうらしいな」

「もしあんたが悪魔を呼んだら、どんな願い事をする?」

「そうだな、一つ目は『俺が健康なうちに残り二つのの願いをかなえてくれ』だ」

「なるほど、考えたな。じゃあ二つ目は?」

「俺が若いうちに最後の願いをかなえてくれ、だよ」

「え?じゃあ三つ目の願いは何なんだ」

「それがなあ・・・実はまだ決めていないんだよ」

そのとき、どこからともなく恐ろしげな声が聞こえてきた。

『早く最後の願いを言ってくれ!いったい何百年待たせたら気が済むんだ!』

昨日出所した

昨日出所した。

おれは五人殺したが事件当時は未成年でもあったから、四年程で釈放。

当時はワイドショーを連日騒がせていたんだ。

今は心から反省してるし早く家族を養うために働きたかった。

なぜ二十歳そこらの俺が家族を養うかって?

当然両親は会社クビになってるし、姉は学費払えなくて中退したんだよ。

外出もままならない家族はこの四年間、飯買いに行く時以外は家に籠もりっぱなしさ。

だが貯金もつきてここ半年は塩と水道水だけで生活してたらしい。

さぞ恨まれているだろうと実家に帰ったが、みんな何もなかったかのように振る舞ってくれて涙がでたよ。

母はテレビを見ながら手を叩いて大笑いしてるし、姉は自慢の髪の毛をドライヤーで乾かしながら誰かと電話で話してる。

父はその様子を見ながら隠していた焼酎をチビチビ飲み、ニコニコしていた。

…………俺が早く働かなければ、このまま…………

受験

うちって近所からは仲がいい家族だとか思われてるぽいな。おもしれえ。

オヤジは数年前から仕事がダメになってからは家族に暴力振るってんだよ。

弟はいっつも勉強ばっかしてる俺をこバカにしやがって。お袋と寝てんの知ってんだよ、ボケ。

ババァはいっつも念仏。うるさすぎ。「お前は虫も殺せない優しい子なんだ」とかありえねえ。

全然わかってねえわ。

俺は今から受験なんだよっ。ふざけんな。

こっそり戻ってきたらみんなビビりやがってwww

「兄ちゃん、許して」だって。時間がねえんだよ、ちょろまかと逃げ回りやがって。

顔をかばうからいけないんだよ、バカが。マスもかけねえぞwww

ま、念押ししたからいっか。言ったら叩き割るだけだし。

よし、手紙も書いたし受験してくるわっ。

ぅわっ、手がヌルヌルする。

最期の修学旅行

その日僕は同窓会に行きました

みんなのムードメーカーのA

頭がよくてわからない問題を教えてくれたB

クラスのマドンナでみんなに憧れられてたC

僕はまたこの愉快なメンバーと騒げることに幸せを感じました

わいわいがやがやと思い出を語っているうちについに最期の修学旅行の話になりました

飛行機の中すごかったよな? だってファーストクラスだぜwww

そんな事を話しているといきなり空気が変わりました

なんだと思ってみてみると木曽が・・・木曽?木曽がなぜここに

さっきまで馬鹿騒ぎしていたAもBもCもクラスの皆もそして私もおびえました

木曽は一人ひとりの席の前に行き、水をかけて回っています

木曽が私の前に来たとき思わず叫んでしまいました

「お前はあのときいなかった お前はこの世にいないはずだ」

嫉妬心が強い妻

長年連れ添ってきた彼女と、ついに結婚することになった。

彼女は嫉妬心が強い子で、他の女の子と話をするだけですぐに不機嫌になるんだ。

でも、本人は浮気をまったくしないし、俺だけを愛してるって何度も言ってくれた。

だから俺は、彼女と結婚することに決めたんだ。

挙式を終えて、一戸建てを買って二人の新婚生活が始まった。

妻は毎朝俺を玄関から見送って、夜はかならず料理を作って待っていてくれる。

俺は本当に幸せだった。

そして数年後、妻が初めての子供を孕る。

医者によると女の子だそうだ。

俺は初めてのことで、それこそ大喜びした。

妻も笑顔で自分のお腹をなでて喜んでいた。

やがてお腹もぽっこり出てくるようになり、俺は妻の腹に耳を当てて、もうすぐ生まれてくる我が子の様子が気になって仕方がなくなるようになった。

朝起きたとき、夜帰ったとき、俺は毎日のように妻のお腹から我が子を可愛がった。

ある日、病院から仕事先に一通の電話が鳴った。

妻が流産したのだ。

俺は上司に無理を言って、急いで妻が担ぎこまれた病院に向かった。

そこで俺は、産婦人科の担当医から、流産の事実を聞かされた。

嘘ではなかった。

俺は病室で寝ている妻のところへ向かった。

妻は疲れたような、悲しいような目で窓の外を眺めていた。

俺は「残念だったな・・・」と呟いた。

「・・・そうだね」と妻も呟いた。

その後に、振り絞るような声で、こう続けた。

「でもあたし、また子供つくるよ。 死んじゃったあの子の分も生きられるような、元気な男の子をね・・・」

再生技術

ある日のことだった。俺はバイクで事故を起こし、左足を丸々切断することになってしまった。

意気消沈していた俺だったが、ある研究者から実験の被験者にならないかという話が来た。

それは人体を再生する新技術の実験であり、

ある程度の大きさの細胞から手も足も心臓も再生するというものだった。

これを使って俺の足を再生しようというのだ。

既に動物実験では成功していて危険性は薄いという研究者の熱心な説得や、

もう一度自分の足で歩いてみたいという願望に負けて、俺は結局その提案に乗ることにした。

それ以来、俺はこの研究所で過ごしている。勿論、しっかりと自分の両足で立ってだ。

最初は不安だったが、成功した今となってはやはりこの話を受けて良かったと心から思う。

今はリハビリや副作用の確認の為にここから出られないが、

早くこの姿を家族にも見せてやりたい。

研究者は再生された部位は、前の物と感じが少し違うかもしれないなどと言っていたが、

何も問題は感じないしもう少しでここから出られるだろう。

とはいえ最近、風邪っぽいんだよなぁ。頭痛もするし手も何か痺れるし、

少しリハビリを張り切り過ぎたのかもしれない。

左足だけは調子が良いんだ……左足だけは。

自殺の森

一月ぐらい前の話し、知り合いと、自殺で有名な深い森に行った。

日付が変わる時、森を散策して居たとき、

一台のホロ付き2屯トラックが駐車場に入って来た。

しかも地元Noでは無く関西地方のNo、

荷台から大きな重そうな荷物をおろしてた。

知り合いと駐車場茂みにひたすら息を殺し隠れてた。

トラックの運転手が俺達の車のNoを記録してた。

あの日から、俺達は家に帰って無い。