俺は東京、恵美子は地元の大学へ進む事になった。
付き合った2年間で、一番思い出深いものをカプセルに入れ、
校舎裏にある一番大きな松の木の下に埋めた。
俺たちが今後結婚することになった時だけ一緒に掘り起こそうと二人できめた。
何をカプセルに入れたのかはお互い秘密。
もしも結婚しなかった場合は、ずっとそのままにしておく事も誓い合った。
進学して1年後、恵美子は交通事故で亡くなったと地元の友達から連絡が入った。
あれから10年。大学時代に出来た恋人と結婚することになった。
俺は、婚約者に過去の思い出を全て隠さずに話した。
彼女は
「私たち、亡くなった美恵子さんの分まで幸せになろうね」
と言ってくれた。
昔埋めた思い出のカプセルを彼女が美恵子の替わりとして
一緒に掘り起こしたいと言った。
俺は美恵子と結婚しなかったらそのままにすると言う約束を彼女に伝えた。
「だから美恵子さんの思いも私が引き継ぐつもりなの」
そう言って聞く耳を持たない。
恐らく、美恵子に対する嫉妬の思いも少しはあるのだろう。
そして結婚式の直前の休日にカプセルを掘り起こした。
俺は美恵子が編んでくれたマフラーを取り出し、彼女に見せた。
彼女は少し不機嫌そうな顔だったが、すぐに美恵子が埋めたカプセルを開けた。
カプセルには、握りこぶしほどの黒い塊が入っていた。
良く見ると小さな手足、産毛の生えた頭があった。
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